面会交流

面会交流とは

1 面会交流とは

 面会交流とは、父母の離婚前後を問わず、父母が別居状態にある場合に、子と同居せずに、実際に子を監護していない親(非監護親)が、子と直接会うこと並びに手紙等で連絡を取り合い、親子の意思疎通を図るものです。

 

 2 「面接交渉」から「面会交流」へ

 上記の面会交流については、従前の家庭裁判所の実務では、「面接交渉」と言われていました。

 しかし、親が子に会うことを「面接」と呼ぶよりも「面会」と呼ぶべきという声が高まり、次第に裁判所でも「面会交流」と言われるようになっていき、その後、最高裁事務総局発行の平成21年7月の裁判所時報1485号11頁から12頁の広告テーマで「面会交流」が使用されてから、全国の裁判所でも「面会交流」と呼ばれるようになり、現在は「面会交流」で定着しています(秋武憲一監修髙橋信幸・藤川朋子著『子の執権・監護の実務』(青林書院、2015年)154頁参照)。

 その後、平成23年に民法766条を改正し、「子の面会及びその他の交流」と規定されました。

 なお、「面接交渉」という言葉を使っている人もいますが、「面会交流」と意図する内容に違いはないと思います。

面会交流ついての考え方

1 面会交流についての考え方の変化

 面会交流については、かつての実務は、監護親や子の心理的葛藤への配慮から、慎重でした。

 しかし、その後、心理学的知見を踏まえ、離婚による片親との離別は子に対して与える短期的・長期的に重要な影響を及ぼすものの、その影響を軽減するには面会交流が重要であると考えられるようになってきました。

 そのため、現在の家裁実務では、子の福祉を害するような例外的な場合を除き、面会交流につき、肯定的な傾向になっています。

 

 なお、このような現在の家裁実務に対しては、実務家による批判もあります。

 

2 面会交流は、権利か

  面会交流の法的性質については、親の権利とする説、子の権利とする説、両者の権利とする説、権利性を否定する説などの諸説があります。

 そして、面会交流が問題になった事件において、最高裁判所も、誰の権利であるのかを、明示していません。

 そのため、滝と山田は、ここでは、面会交流「権」とはせず、面会交流としています。

 

3 面会交流と養育費の問題

 時折問題になるのが、面会交流と養育費との関係です。最初から結論を言えば、面会交流と養育費は法律上直接関係していません

 しかし、残念ながら、このことは、弁護士でも理解していない人がいるようです。次のような指摘が裁判官からもなされています。

 

「残念ながら、当事者本人のみならず、代理人弁護士の中にも面会交流の意義を理解せず、養育費の分担額及び分担方法等を協議等する際の駆け引き材料と考えているものがいる。この場合、面会交流の趣旨・意義について説明せざるを得ないのが実情である。」(秋武憲一監修 髙橋信幸・藤川智子著『子の親権・監護の実務』(青林書院、2015年)179頁)  

面会交流の調整場面

1 夫婦での合意による場合

 当事者間で、子の親権者とならない親と子の面会交流について、直接話し合いがつく場合は、その話し合いによって合意した内容によります。その際にも、子の利益を最も優先して考慮すべきです。

 

 そして、当事者だけでは、話し合いがつかない場合には、調停、審判手続で、面会交流の問題について解決していきます。

 

2 離婚訴訟と面会交流

 面会交流については、離婚訴訟でも法律上対象になり得るのですが、離婚訴訟で和解で解決される場合の除くと、実際に、離婚訴訟で面会交流が判断されることはあまり無いことを知っておく必要があります。

  

 これは、離婚訴訟では、調停や審判といった手続きと異なり、家庭裁判所調査官による期日立ち会いや環境調整をするための措置がなく、面会交流のための適切な調整が難しいためです。

 そのため、離婚訴訟になっている場合、面会交流については、別途、調停、審判によって解決することになります。 

面会交流の具体的内容・定め方

1 直接的面会交流と間接的面会交流

  面会交流は、本来、直接非監護親が子と直接会って交流するものです(直接的面会交流)。

 もっとも、このような直接的な面会交流が難しい場合など、非監護親が監護親に対し、子に宛てた手紙やプレゼントを渡し、監護親から子に渡してもらったり、監護親が非監護親に対し、子供の成長や日常生活やが学校生活等の状況が分かる写真や通知表のコピー等を送付ってもらうなどの間接的な面会交流もあります。

 

2 面会交流の具体的内容の定め方

 一般的には、面会交流の内容を定める場合には、当事者が柔軟に対応し、自主的に面会交流を実施できるように合意を取り付け、当事者や子の負担を考慮して、日時、場所、回数などをあまり固定しないで、これらを後日、当事者が協議して決めていくようにすることが望ましいとされています。

 

 例えば、調停条項で、

 

「長男〇〇と、月1回程度、面会交流することを認める。その具体的な日時、場所、方法等は、子の福祉を尊重し、当事者間で事前に協議して定さだめる。」

 

 という形が考えられます。

 

 このように、かなりざっくりとした形になります。面会交流の頻度についても、「月1回」とせずに、「月1回程度」として、「程度」をいれています。

 もし、「月1回」としてしまうと、何らかの事情で、月1回の面会交流が出来ない場合は、約束違反になってしまいます。

 他方で、月に2回以上の面会交流が可能で、望ましい場合も、監護親が非監護親と子との面会交流を月1回に制限する根拠に悪用されてしまうからです。 

 

 このようなざっくりとした形になるのは、監護親と非監護親との間に、子の面会交流のために連絡を取り、協議できるだけの信頼関係がある場合です。

 家庭裁判所からすると、子の両親が、協議して面会交流を続けることで、子のために協力しようとする両親の気持ちに期待しているのかもしれまん。

 

 

 他方で、当事者間で子の面会交流について、協議をすることができない場合や、面会交流の条件などの協議で対立する場合などは、面会交流の内容や条件をきっちりと具体的に決めて、機械的に面会交流を実施できるようにしていきます。

 

 ただし、このようにきっちりとしてしまうと、その後の事情変化(子の成長に伴う生活状況の変化や子の病気など)に対応しにくくなり、当事者だけでなく、子にも不要な負担をさせるリスクがあります。

面会交流の禁止・制限事由

1 子の連れ去りのおそれがある場合

 非監護親による子の連れ去りは、子の生活環境を大きく変更し、子の動揺を与え、基本的に子の福祉に反することから、子の連れ去りのおそれが高い場合には、面会交流を禁止・制限すべき事由になります。

 

2 非監護親が子を虐待していた場合

 非監護親と会うことによって更なる精神的なダメージを受けるおそれがある場合には、面会交流を禁止・制限すべき事由になります。 

 

3 監護親が非監護親からDVなどを受けていた場合

 監護親が非監護親から子の面前で暴力などを受けていた場合で、それが子に対しても精神的なダメージを与え、現在も子がそのダメージから回復できないような場合は、面会交流を禁止・制限すべき事由になります。 

 

4 子が拒絶をしている場合

 子の年齢、発達の程度、非監護親との従前の関係、拒絶の理由や背景事情から、子の真意からの拒絶は面会交流を禁止・制限する事由になります。

面会交流の実現方法

1 監護親と非監護親の信頼関係の重要性

 面会交流を実現するには、監護親と非監護親との信頼関係が重要です。

 面会交流が実施されない場合、下記に述べる手段はありますが、いずれも、面会交流の内容を強制的に実現するものではありません。 

 そのため、面会交流を実施して実現していくのは、監護親と非監護親との信頼関係が重要なのです。

 

2 履行勧告(家事事件手続法289条)

 家庭裁判所での調停、審判で定められた面会交流を義務者が履行しない場合、権利者の申出により、家庭裁判所は義務の履行状況を調査し、義務者に義務の履行を勧告してもらことができます。

 もっとも、この履行勧告には、強制執行のような強制力はありません。また、当事者間の調整もしません。

 

3 再度の調停・審判の申立て

 再度の面会交流調停・審判を申立てをし、面会交流の内容が定められた後の諸事情の変化を考慮して、面会交流の阻害要因を把握して、再度の調整を行うことになります。

 

4 間接強制の申立て(民事執行法172条)

 調停条項や審判での面会交流の内容が間接強制を可能とするものである場合には、間接強制を申立てることによって、監護親に心理的圧迫与えて自主的な面会交流を促すことが考えられます。

 もっとも、間接強制によって、さらに父母の信頼関係が悪化し、面会交流の実施が難しくなることも考えられます。

 

 平成25年に、各最高裁決定によって、面会交流を定めた調停調書や審判に基づき、間接強制をするためには、「面会交流の日時又は頻度」、「各回の面会交流の長さ」、「子の引渡し方法」の3要素が特定されていることが必要であることが明らかになりました。

 そして、この特定の程度は、比較的に厳格に考えられています。

 

 現状では、1回の面会交流の不実施につき、5万円から8万円程度の間接強制金が定められていることが多いようです。

 

5 損害賠償請求

 正当な理由なく面会交流を妨害する行為があった場合、その行為を、不法行為として、慰謝料請求をすることも考えられます。

 しかし、この損害賠償請求をしても、対立が一層厳しくなり、面会交流の実施は遠のく結果になることが予想されます。

面会交流と養育費

面会交流の実施と養育費の支払いは法律上の対価関係にはありません

そのため、面会交流が実施されていなくもて、養育費の支払いを免れることはできません。

 

もっとも、面会交流の実施の円満な実施が、養育費の支払いを促すという相関関係にあることは否定できません。

試験的面会交流

1 試験的面会交流

 試験的面会交流とは、家庭裁判所において、家庭裁判所調査官の関与のもと、非監護親が子と面会交流するものです。

 

 試験的面会交流は、本格的な面会交流の導入や当事者間の面会交流の調整を目的として行われます。例えば、長期間面会交流が実施されてない場合や監護親が非監護親と子の面会交流を拒否している場合などに実施されることがあります。

面会交流の支援団体等

面会交流を支援する団体としては、以下のようなものがあります。

もっとも、利用にあたっては、利用の条件・ルール、費用等を確認しておく必要があります。

 

 家庭問題情報センター(Family Problems Information Center:FPIC)

 

 通称は、「FPIC(エフピック)」といいます。ここは,家庭紛争の調整などに携わってきた元家庭裁判所調査官たちの経験と専門知識,技法を広く活用し、 健全な家庭生活の実現に貢献することを目的として設立され、現在は公益法人になりました。

外国法での面会交流 ドイツの場合

ドイツでは、少し前に、面会交流に関して、民法等の改正が行われ、

 子と父親・母親との面会交流は原則として子の福祉に適うこと、

 子の面会交流権、

 親が子と面会交流する義務があること、

 父親と母親は、面会交流促進義務があること

 子の福祉のために必要なときは面会交流を制限できること

 家庭裁判所の合意への努力義務等

といった面会交流関係の規定を整備したようです。

 

また、司法、行政、民間組織の連携による当事者の支援などもなされています。日本とは大分状況が違っています。