離婚と破産

はじめに

 離婚と破産を巡る法律関係については、人によって考えや見解が異なるので、ここでのものも試論的なものです。

 今後、クリアになることが望まれます。

 

 以下の記述では、「破産債権」という言葉が出てきます。厳密には、破産法2条5項に定義規定があります。

 しかし、ここで「破産債権」の定義を示す意味はあまりないと思います。それよりも「破産債権」になることの実際の意味を把握しておけば十分かと思います。

 

 通常、個人の破産を念頭に置いた場合、破産債権は、破産手続外での権利行使が禁止され、破産債権に優先する債権への配当後に破産債権に配当がなされます。

 

 そのため、実際は、破産債権に配当がなされることはほとんど無いので、破産債権となると、権利を自由に行使できず、配当も期待できないということです。

権利者の破産

離婚の可否

 影響を受けません。

親権者の指定

 影響を受けません。

面会交流

 影響を受けません。

慰謝料

1 離婚後、慰謝料請求権の内容が確定した後に、権利者が破産した場合

 破産財団に組み入れられて、債権者の配当等の対象になり得ます。

 

2 離婚後、慰謝料請求権の内容が確定する前に、権利者が破産した場合

 この場合、請求権利者が行使の確定的な意思を表明した時に、一身専属性が無くなり、破産財団に組み入れられる余地があると考えられます。

 

 もっとも、名誉棄損による慰謝料請求権について、具体的な金額が当事者間で客観的に確定しない間は、差押えの対象にも債権者代位の目的にもならないとする最高裁判所の判例があります(最判昭和58年10月6日民集37巻8号1041頁)。

 そして、破産財団の範囲を定める破産法34条3項2号は、差押えることができない財産は、破産財団に属しないとしています。

 そうすると、この段階ででの慰謝料請求権は、破産管財人も管理できなことになるかと考えられます。

財産分与

1 離婚後、財産分与請求権の内容が確定した後に、権利者が破産した場合

 破産財団に組み入れられて、債権者の配当等の対象になり得ます。

 

2 離婚後、財産分与請求権の内容が確定する前に、権利者が破産した場合

 この場合、請求権利者が行使の確定的な意思を表明した時に、一身専属性が無くなり、破産財団に組み入れられると考えられます。

 

 なお、財産分与を求める家事審判や離婚訴訟に附帯処分として財産分与を求めていた場合に、身分関係の手続きであることから、破産手続開始によって手続は中断するのは不適切であると考えられます。

 もっとも、財産分与の内容によっては、破産手続に影響を与える可能性も否定できません。

 そこで、破産管財人が、家事審判であれば利害関係参加、離婚訴訟であれば共同訴訟的補助参加として、関与することが考えられます。

養育費

1 破産手続開始決定前の部分

 破産財団に組み入れられます。

 

2 破産手続開始決定後の部分

 破産財団に組み入れられません。

義務者の破産

離婚の可否、親権者の指定、面会交流

 破産の影響はありません。

慰謝料

1 破産手続開始前に確定している場合

 破産債権として、破産手続に取り込まれます。

 

2 破産手続開始前に確定していない場合

(1)慰謝料請求の民事訴訟を提起後に、破産手続開始された場合

 民事訴訟は、中断されて(破産法44条)、破産債権として、破産手続きに取り込まれます。

 

(2)慰謝料請求を家事調停手続で請求していた後に、破産手続開始がされた場合

 

財産分与

1 離婚に伴う財産分与として分与完了後に、義務者に破産手続開始された場合

 破産者である義務者が、破産手続開始決定前に離婚に伴う財産分与をしていた場合、通常2分の1相当の財産分与であれば、相当性があり、特段否認対象行為ならないと言われています。

 

2 離婚後、財産分与請求権の内容が確定した後、義務者に破産手続開始された場合

 財産分与請求権は、破産債権となります。

 

3 離婚後、財産分与請求権の内容が確定する前に、義務者に破産手続開始された場合

 財産分与請求権は、破産債権となります。

 

4 財産分与請求権は免責対象となるのか

 破産法の条文では、明示の規定はありません。

 

 他方で、財産分与については、清算、慰謝料、扶養の要素があるとされます。

 

 当該財産分与に慰謝料の要素があり、それが悪意による不法行為に基づく慰謝料である場合は、悪意の不法行為に基づく請求権は免責対象ではないことから、免責対象ではないとすべきように思われます。

 

 また、当該財産分与に扶養の要素がある場合、扶養義務に基づく請求権は免責対象にならないことから、当該財産分与における扶養の要素部分は、免責対象ではないとすべきように思われます。

 

 しかし、当該財産分与について、清算、慰謝、扶養の3要素を考慮して定めたとしても、3要素を分解し、免責対象にならない部分とそうでない部分を分解できるのか疑問です。

養育費

1 養育費の金額について確定している場合

(1)破産手続開始決定前に、発生した養育費請求権

 この場合、養育費請求権は、免責対象にならず、義務者が破産し免責決定を受けても養育費の支払いを免れることはありません。

 ただし、破産手続では、一般破産債権として破産手続に取り込まれることになります。

 

(2)破産手続開始決定後に、発生した養育費請求権

 この場合、養育費請求権は、破産債権にならないので、義務者は破産手続に関わらず、養育費を支払う必要があります。

 

2 養育費を定める調停・審判手続中に、義務者に破産手続開始がなされた場合

 この場合、調停・審判は中断しないという考えや、審判は破産管財人が引き続くという考えもあるようです。

 破産手続開始前の部分については、破産債権となり、破産手続開始後の部分は、破産債権になりません。