離婚と氏

婚姻によって、氏を改めた夫または妻の離婚後の氏、離婚の子の氏、離婚による戸籍について、解説をします。

配偶者の氏

1 原則

 婚姻によって氏を改めた夫または妻は、離婚により、原則として、婚姻前の氏に戻ることになります(民法767条1項)。

 

2 婚氏続称制度

 離婚によって、婚姻前の氏に戻った者は、離婚の日から3カ月以内に、届出をすることにより、婚姻時の氏を称することができます(民法767条2項)。

子の氏

1 原則

 父親と母親の離婚によって、子の氏は変更しません。

 もっとも、離婚後、親権者となった親の氏に変更する場合が多いと思われます。

 

2 子の氏の変更手続き

 子の氏が父親または母親の氏と異なる場合、子は家庭裁判所の許可を得て、父親または母親の氏を称することができます(民法791条1項)。

 子が15歳未満の場合、子の法定代理人が、子の代わりに氏の変更手続きを行うことができます(民法791条3項)。

 15歳以上の子は、自分の氏をどうするか、自分で決めて、氏を変更するのであれば、家庭裁判所の許可を得て、氏を変更することになります。

 

 この子の氏の変更手続きで、氏を改めた子も成人に達してから1年以内であれば、届出によって、従前の氏に戻すことができます(民法791条4項)。

戸籍の問題

1 離婚した当事者夫婦の戸籍

 婚姻により、氏を改めなかった夫または妻は、離婚により、戸籍が変更されることは、ありません。

 

 上記のとおり、婚姻により、氏を改めた夫または妻は、離婚により、原則として、婚姻前の氏に戻ることになります(民法767条1項)。

 そのため、婚姻前の戸籍に入ることになります(戸籍法19条1項)。

 

 ただし、婚姻前の戸籍の筆頭者をはじめ全員死亡していた場合や婚姻により氏を改めた夫または妻が、新戸籍の編製の申出をした場合には、新しい戸籍が編製されて、その戸籍に入ることになります。

2 子の戸籍

 父親と母親の離婚によって、子の戸籍は変わりません。

 

 子の氏が、親権者となった親と氏が異なる場合、子はそのままでは、親権者である親の戸籍に入ることはできません(戸籍法6条、18条)。

 

 氏が異なる子が、同じ戸籍に入るために、子の氏を家庭裁判所の許可を得て変更することになります。

 子の親権者が、離婚により従前の戸籍に戻ったとしても、戸籍の筆頭者でない場合には、子の親権者を戸籍の筆頭者とする戸籍が新しく編製されて、子はこの新しい戸籍に入ることになります。

 これは、戸籍制度が、一組の夫婦と、その夫婦と同じ氏を持つ子ごとに編製されるので(戸籍法6条)、子の祖父母が筆頭者である戸籍に入ることは想定されていないためです。