個別事案の税金の有無・金額については、税理士等の税務の専門家に相談して頂くようお願いします。
1 慰謝料は、心身に加えられた損害に基因して取得する損害賠償金として、非課税所得になります(所得税法9条1項17号)。
したがって、慰謝料を取得しても所得税は課せられません。
2 また、慰謝料の支払いを受けたとしても、それは、損害賠償義務者による債務の履行であることから、贈与にも該当しないので、贈与税も課せられません。
もっとも、慰謝料支払名目で、財産を移転したような場合、贈与があったとして、贈与税が課税される可能性があります。
3 なお、慰謝料の支払いに代えて、不動産を譲渡する代物弁済契約を締結し、不動産を給付する場合には、課税関係が変わるので、税務の専門家に助言を求めるべきでしょう。
1 金銭を財産分与する場合
贈与税も、所得税も、財産分与を受けた者に課税されません。財産分与として金銭を支払うものにも、課税はされません。
もっとも、相続税法基本通達8-9は、例外として、「その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分又は離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額は、贈与によって取得した財産となる」としています。
つまり、財産分与名目で、過大な財産分与がなされた場合は、贈与税の課税対象にされる可能性があります。
2 所有不動産を財産分与する場合
(1)財産分与を受けた者
財産分与を受けた者には、贈与税は課税されません。
もっとも、金銭の場合と同様に、財産分与名目で、過大な財産分与がなされた場合は、贈与税の課税対象にされる可能性があります。
不動産取得税について(地方税)
不動産の取得が、夫婦の婚姻期間中の財産の清算をする趣旨の財産分与であると認められる場合は、形式的な財産移転として不動産取得税を課すべきではないという裁判例があり、課税実務もそれに従っているようです(三木義一監修本山敦・伊川正樹編『新実務家のための税務相談(民法編)』(有斐閣、2017年)284頁参照)。
登録免許税について
不動産を財産分与によって取得した場合、その所有権移転登記手続をする際に、不動産登記の登録免許税が必要となります。
登録免許税の額は、不動産価格の1000分の20とされています。
(2)財産分与をした者
譲渡所得税について(国税)
財産分与によって不動産を譲渡する場合、財産分与をした譲渡者に譲渡所得が生じる可能性が
あります(最判昭和50年5月27日民集29巻5号641頁)。
もっとも、常に課税されるとは限りません。
居住用財産の譲渡の特例について
離婚後に居住用財産を譲渡した場合、租税特別措置法35条により、居住用財産の譲渡所得の特別控除として、最大3000万円の譲渡所得の特別控除が適用される可能性があります。
所有期間10年超えの居住用資産の譲渡の軽減税率の適用について
また、所有期間が10年を超えている居住用資産(不動産)の場合には、居住用資産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例として、租税特別措置法31の3による軽減税率が適用される余地があります。
養育費は、通常必要と認められるものであれば、所得税も贈与税が課税されず、非課税となります(所得税法9条1項15号、相続税法21条の3第1項2号参照)。
通常必要と認められるものとは、相続税法基本通達21の3-6で、被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産をいうものとされています。
もっとも、相続税基本通達21の3-5によって、養育費として支払われたとしても、それを預貯金をしたり、株式や家屋の購入代金で使用した場合は、通常必要と認められるものとは扱わないとしています。つまり、贈与税の課税対象にされてしまいます。
1 所得税法・相続税法上の取り扱い
婚姻費用についても、基本的に、上記の養育費と同じです。
2 過去の婚姻費用分の支払いについて
過去の婚姻費用が権利者に支払われた場合、当該権利者は必要な都度に取得したことなりません。
そのため、取得時点で、通常必要なものを超えているとされ、贈与税の課税対象になる可能性があります。
もっとも、その支払が、それほど高額にならなければ、贈与税の基礎控除の範囲内で収まることが予想されるので、実際に課税はなされずに済むのかもしれません。
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